夏の風物詩ブランドといえば、ある世代以上の人が思い浮かぶものの一つが、カルピスではないだろうか。
水玉の記憶が青春の甘酸っぱさを想起させ、白色や氷の音の清涼感、季節やシーンと結びついた情緒的な味覚連想が豊かな資産を築いてきたブランド。
1922年にカルピス創業者の三島海雲が、「初恋の味」というキャッチコピーをつけてから、カルピスウォーター時代の「スキとキスの前に。」そして「カラダにピース。」など、一貫した広告と歴代の名コピーも印象に残っている方も多いかも知れない。
カルピスというブランドを、(記憶やシーンを思い出してふと飲みたくなる)「思い出飲料」として取り上げることも多いが、既に100年を超える歴史を持つ、売上1000億規模のキャッシュカウ・ブランドとなっている。
時代の変遷を経て、今は懐かしい紙包みのコンク(濃縮)の瓶もなくなり、おそらく事業の利益率やベンダーの問題もあって、経営も10年前に味の素からアサヒHDグループに移動している。
一方マーケティングでは、青春とともに卒業してしまうブランドから、大人向けに乳酸菌の健康イメージを強化したリポジショニングが功を奏して、再成長を続けている。近頃はコロナ禍の自宅需要で、カルピスの濃縮タイプが再び伸びているようだ。
ちなみに今のカルピスは、大豆多糖類を配合して、甘ったるくなく昔の濃縮のような白い塊が出ないなど、地味に美味しく進化している。ブランドをつくることは簡単だが、顧客にとっての価値を輝かせながら蓄積・進化し、長期に渡って一貫性を持ちながら育てることは難しい。
コラムでは、こうした日本発の100年ブランドも取り上げていきたい。